イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
私の思いとは裏腹に、安藤はソファからスクッと立ち上がるとキッチンに素早く移動してきてしまった。
遠回しな私の遠慮の言葉は、残念ながら安藤には通じなかったようだ。お礼の言葉もつい、ぎこちなくなってしまった。
「で? 俺はなにをすればいい?」
ヤル気満々の安藤が、私に尋ねてくる。
「じゃあ、から揚げをお願い」
「了解」
安藤が鶏肉を揚げている間におにぎりを握って、玉子焼きを作れば効率がいい。
料理の邪魔にならないように、手首につけていたシュシュで髪の毛をひとつに束ねた。その様子を見ていた安藤がポツリとつぶやく。
「穂香の髪ってサラサラしていて、いい香りがするよな」
私をからかっておもしろがるのは安藤の悪い癖。昨夜だけでは物足りず、また私を振り回すつもり?
「お世辞言わないで」
安藤に再びからかわれないためにピシャリと予防線を張る。そして冷蔵庫からお弁当の食材を取り出した。そんな私の前に安藤が立ちはだかる。
「お世辞じゃないって。だからもう一回、触ってもいい?」
えっ? 『触ってもいい?』って、どういうこと? もしかして寝ぼけているの?
安藤の大胆なお願いを聞き、鼓動がトクンと波打つ。