イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

目をパチクリさせていると、安藤が腰を屈めて顔を覗き込んできた。私の目をじっと見つめて小首を傾ける安藤は、まるでご飯をおねだりするような仔犬のようでかわいらしい。

でも私と安藤はただの同期。不要なスキンシップはお断りだ。

私が「ダメに決まっているでしょ」と速攻で断れば「ちぇっ。つまんないの」と安藤が不服そうに唇を尖らせた。

昨夜はいつもとは違う色気をまとった安藤のせいで、なかなか寝つけなかった。そして今朝は不意のおねだり攻撃。

安藤に完全に振り回されていることを実感しながら彼の脇を通り抜け、気持ちを落ち着かせるために大きく息を吐き出した。

「さて、作るか」

安藤は私の横でそう言うと、下味をつけた鶏肉に粉をまぶし始めた。

動揺しているのは自分だけという事実が、なんだか悔しくて腹立たしい……。

玉子焼きをつくるために卵をガツンと割ると、グシャリと黄身が崩れてしまった。その様子を見た安藤がクスクスと笑い出す。

「穂香。ドンマイ!」

「うるさい!」

やっぱり私は、同期の安藤が苦手だ。

< 79 / 210 >

この作品をシェア

pagetop