イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

同期のアイツと動物園


お弁当が無事に完成し、蓮くんを起すと昨夜作ったカレーを三人で食べる。そして身支度を整えて安藤のウチを後にした。向かう先は、もちろん動物園だ。

動物園に行くのは、小学校の遠足以来。スキップで歩道を進む蓮くんに負けないくらいワクワクしながら駅に向かった。



電車とバスを乗り継いで動物園に無事たどり着く。人が多い気がするのはゴールデンウイーク真っ只中だからだろう。

それでも朝から弾ける笑顔を見せてくれる蓮くんと一緒だと、自然にテンションが上がった。

「はい、これ」

「ありがとう」

安藤が買ってくれたチケットを受け取り、早速入園ゲートに向かった。

「蓮、人が多いから絶対に俺たちの手を離すんじゃないぞ」

「うん」

右手は安藤と、左手は私と、すでに手を繋いでいる蓮くんは、安藤の注意を聞くとコクリとうなずいた。

入園ゲートには、多くの人が並んでいる。隣の家族連れの様子をチラリとうかがえば、蓮くんより少し背の高い女の子がパパと手を繋いでいた。

傍から見たら私たちって親子に見えるのかな?

彼氏もおらず、結婚もしていないのに、自分がママに見られることが照れくさい。



無事入園した私たちを迎えてくれたのは、大きなインド象。足は丸太のように太くて、あたり前だけど鼻はホースのように長い。

「ほのかちゃん。あのゾウさんもおふねにのってここまできたのかな?」

「そうかもしれないね。あっ、蓮くん見て。りんご食べてるよ」

「ほんとうだっ!」

昨夜寝る前に蓮くんに読み聞かせをしたのは、象のチビ助が船に乗って冒険するお話。読み始めてからすぐに寝入ってしまったため、話は忘れてしまっただろうと思っていた。けれど、蓮くんは内容をきちんと覚えてくれていた。そのことが、とてもうれしかった。

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