イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
焦りながら足を進めて蓮くんを捜し続けた。でもゴールデンウイークの動物園は、家族連れでにぎわっている。小さな子供の姿など、大人の陰に隠れてすぐに見えなくなってしまう。
心細くてひとりで泣いていたらどうしよう。考えたくないけど、連れ去られた可能性だってある。
行方不明になってしまった蓮くんのことを考えただけで、胸が張り裂けそうに痛み出した。
この状況の中、私ひとりで蓮くんを捜し回っても埒が明かない……。
焦る私の頭に真っ先に浮かんだのは、同期のアイツの顔。バッグからスマホを取り出し、安藤のナンバーを表示させた。そのとき、どこからともなく私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「穂香!」
この声は、今まさに連絡を取ろうとしていた安藤だ。
顔を上げて辺りを見回すと人ごみの中、長い手を掲げて自分の居場所をアピールしている安藤の姿が目に飛び込む。
「安藤!」
人をかき分けて安藤がいる方へ駆け出し、その広い胸板に飛び込んだ。
「安藤、どうしよう。蓮くんが、蓮くんが!」
蓮くんが迷子になってしまったことを安藤に伝えたいのに、気持ちばかりが空回りしてうまく説明できない。もどかしく安藤のシャツを両手で掴むと、彼の大きな手が頭の上にポンとのった。
「穂香。落ち着けって」
「う、うん」