イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
安藤の言う通り、私が動転したままでは事態は一向に解決しない。頭の上に安藤の温もりを感じつつ深呼吸を繰り返してみれば、気持ちがだいぶ落ち着ついてきた。
「それで蓮がどうした?」
「蓮くんが迷子になっちゃったの! 安藤、どうしよう……」
ひとりで抱えていた不安を安藤に吐き出した途端、張りつめていた緊張が解けて視界がゆらゆらと揺れ出す。
このまま蓮くんが見つからなかったら、蓮くんのご両親に顔向けできない……。
私が泣いても仕方がないとわかっていても、一度あふれ出た涙を止めることはできなかった。
泣き顔を見られたくなくて、うつむきながら瞳から零れる涙を指先で拭う。そんな私の耳に聞こえてきたのは、安藤のまさかの言葉だった。
「穂香。蓮ならここにいるけど」
「へ?」
勢いよく顔を上げた先に見えたのは、私がずっと探していた蓮くんの姿。どうやら私は安藤と手を繋いでいる蓮くんに気がつかないほど、動転していたようだ。
「蓮くん!」
声をあげて駆け出すと、蓮くんの前でひざまずく。そして、その小さな体を力いっぱい抱きしめた。大きな動物園でポツンとひとりでいたかと思うと、また涙腺が緩み出す。
「蓮くん、ごめんね。ごめんね」
震える声で謝っていると、蓮くんが思わぬことを言い出した。
「なんで、ほのかちゃんがあやまるの?」
「だって、蓮くんを迷子にさせちゃったから……」