イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
抱きしめていた腕を緩めて蓮くんの顔を覗き込む。すると目の前で、蓮くんがクスクスと笑い出した。
「まいごになったのは、ほのかちゃんのほうだよ」
「へ?」
蓮くんが口にした言葉の意味がわからない。キョトンとして蓮くんを見つめていると、安藤が私の横に屈んだ。
「ライオンを見ていたら、穂香がいないって蓮が騒ぎ出してさ」
「……はい」
嫌な予感を抱きつつ、安藤の説明に相づちを打つ。
「こりゃ大変だって、蓮と一緒に穂香をメッチャ捜しました」
「……」
蓮くんではなくて、まさか自分が迷子になっていたとは驚きだ。嫌な予感が見事的中してしまい、返す言葉がみつからない。
「あのさ、いい年して迷子にならないでくれる?」
「ごめんなさい!」
蓮くんの前で失態をおかしてしまうとは、なんたる不覚。穴があったら入りたい……。
ガックリと肩を落として沈み込む。そんな私にかけられたのは「ほら」という言葉。安藤の手が目の前に差し出される。
「なに?」
「また迷子にならないように、手を繋いでやる」
子供扱いされることは不服だけれど、迷惑かけたのはこの私。今は文句を言えない。
「はい」と小さく返事をして、安藤の手に自分の手を重ねた。
「よし、行くか」
「うん!」
蓮くんの返事がスタートの合図。立ち上がると再びライオンを見に向かう。
大きくて温かい安藤の手に包まれていると、心がトクトクと波立つのは何故?
ライオンよりも、安藤が気になって仕方がない。