イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「そんなことない。穂香が隣で笑ってくれるだけで安心できるんだ」
安藤はそう言うと私の背中に腕を回し、肩に頭をコトンとのせた。
プライベートの安藤はよくしゃべるし、よく笑う。そして時々甘えん坊に変身する。これが素の安藤なのだろう。
体を寄せて私に甘える安藤をかわいらしく思っていると、彼の柔らかい髪が耳に触れ、思わずピクリと肩がすくんでしまった。
「やっぱり耳、弱いんだな」
顔を上げた安藤の口もとが、意地悪く緩んでいるのが見える。
「そ、そんなことないもん」
咄嗟に強がってみたものの、声が震えていては説得力に欠ける。そう思っていると、安藤が私の耳に唇を寄せた。
「だったらこれは?」
「……んっ」
小さな声が漏れてしまったのは、安藤が私の耳に息を吹きかけたから。昨日と同じようにからかわれたことが悔しい。
「あ、安藤……。やめて……」
声を震わせながら安藤に抗議すれば、私の背中に回っていた彼の腕がするりと解かれた。
もう、ふざけるのはこれでおしまい。
ホッと胸をなで下ろした矢先、安藤が私の名をポツリとつぶやく。
「穂香……」
「なに?」
視線を上げた先に見えるのは、穏やかな笑みを浮かべる安藤の顔。その優しいまなざしをじっと見つめていたら、ふたりの距離が徐々に縮まっていった。