イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

昨日は動物園に行って、夜はファミリーレストランで夕食を取った。ご飯はおにぎりに全部使ってしまったし、買い物もしていないから、安藤の言う通り食べる物はなにもない。

「安藤、ありがとう」

「いや、これくらいどうってことないから」

「……う、ん」

相づちがぎこちなくなってしまうのは、安藤を意識してしまったせい。

昨夜、私と安藤はキスをした。ほんの数秒、唇が触れただけだったけれど、たしかにあれはキスだった。

寝つきが悪かったのは、安藤が私にキスをした理由を考えていたから。一晩経っても、その答えは出ていない。

「蓮、どのパン食う?」

リビングに移動した安藤が、買ってきたパンをテーブルの上に広げる。

「んー、どれにしようかな」

玉子サンドにツナサンド、ピザトーストにマフィンと、種類も豊富なパンを前に蓮くんが悩み出した。

たしかにどれもおいしいそうで、蓮くんが迷ってしまうのも仕方ない。

「そうだ。スープ作るね」

一昨日、カレーのつけ合わせのサラダを作る際に買ったキャベツが冷蔵庫にまだ残っている。人参と一緒に煮て玉子でとじれば、すぐにスープができあがる。

「お、サンキュ」

「ううん」

軽くお礼を言う安藤に、目立った変化は見られない。

安藤にとって、あのキスはおやすみのキスだったとか?

いつまでも昨夜の出来事にこだわっている自分がバカみたいに思えて、あのキスは忘れることにした。

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