イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

気を逸らせるようにジェラートの味を尋ねてみれば、元気いっぱいの声が返ってきた。

「ぼくはチョコ。ほのかちゃんは?」

「んっと……どれにしようかな」

色とりどりのジェラートが並んでいるケースを再び覗き込む。

「ほのかちゃん、はやく~!」

「う、うん。ごめんね」

五歳児に急かされるとは情けない。そう思いながら悩んだ末に選んだのは、甘酸っぱいイチゴ味。

「蓮くん、おいしいね」

「うん」

フードコートのイスに腰を下ろし、蓮くんとふたりでジェラートを味わう。

「蓮くん、ひと口食べる?」

「いいの?」

「もちろん、いいよ。どうぞ」

ひまわりのような明るい笑顔を見せる蓮くんにジェラートを差し出す。蓮くんはイチゴ味のジェラートをスプーンで上手にすくうと口の中に入れた。

「どう? おいしい?」

「うん、おいしい。ほのかちゃん、ぼくのもたべていいよ」

「本当? ありがとう」

蓮くんのジェラートをスプーンですくい、濃厚なチョコ味を堪能する。

ジェラートを仲良くシェアし合う私と蓮くんは、まるで恋人みたいだ。

束の間の幸せに酔っていると、私を現実に引き戻す低い声が聞こえてきた。

「おい、なにイチャついてるんだよ」

振り返った先にいたのは、もちろん安藤。

「もう帰ってきたの?」

たしかに安藤は『すぐ戻る』と言っていた。けれどこんなに早く戻ってくるとは思ってもおらず、つい本音が飛び出てしまった。

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