そんな目で見ないでっ!

さくらと司

その日、司は高校の前で秋菜を待っていた。

職員の勉強会の為に午前中で授業が終わったのだ。

秋菜が恥ずかしくないよう、少しでも大人っぽく見える服に着替えた。

校門前の歩道のガードレールに腰を下ろすと、校舎をぼんやりと見た。

秋菜が通う高校。

どんなに通いたいと思っているか秋菜は知らないだろう。

告白さえ冗談に取られてしまう。

気持ちが伝わっていても、中学一年と高校三年では周囲の目が気になり、秋菜はOKしないだろう。

秋菜の性格を司はよく知っている。

恋愛には奥手で、目立つ事が嫌いな秋菜だから、自分と付き合うとなれば人目を気にしてしまうだろう。


「ほんと、面倒な女を好きになったよな…」


ポソッと呟いた時、誰かに肩を叩かれた。


「秋菜ちゃんを待ってるの~?」


耳障りな甘ったるい声が聞こえる。

見ると、髪をくりくりに巻き、可愛いでしょと言わんばかりの顔をした女が立っていた。


「誰?」


司が冷めた目で見ながら言うと


「緑川さくらだよ~。
秋菜ちゃんと、同じクラスなの~」


と言い、上目使いで司を見た。


「秋菜ちゃんなら~、もう帰ったよ~」
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