そんな目で見ないでっ!
「香苗、もう諦めな…」


ゆかりは香苗にそう告げた。

ゆかりは、予想外の言葉に表情を強張らせた。


「何で?」


香苗が尋ねると、ゆかりは黙り込んだ。

司のあの目を思い出す度に身がすくむ。


「香苗ならもっと良い男狙えるじゃん…」


その言葉に香苗はチッと舌打ちをした。


「使えないやつ」


小声で呟いた。

香苗は両手で顔を覆い、泣いたふりを始めた。

ゆかりはただオロオロとするばかり。


「何でそんな事言うの?
私は司君だけが好きなのに…
ゆかりちゃんなら分かってくれるって信じてたのに…」


香苗の言葉に、ゆかりは泣きそうな顔をした。

その顔を指の隙間から確認した香苗は、ニヤッと笑っていた。

この手を使えばゆかりは意のままに動いてくれる。

そんな自信があったのだ。

しかし今回は違った。

ゆかりは表情を曇らせたまま黙ったままなのだ。

いつもなら威勢良く


「あたしが言ってきてあげる」


等と言う所なのに。

その状況に香苗は焦りはじめた。
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