お嬢様は恋をしません。
湊音が2人分のカバンを持って、私の前に立っていた。




「寝すぎ。危ないでしょ」




「大丈夫よ」




「莉緒」





「あ…うん」




普段の口調を使ってしまった。




湊音は苦笑いしてる。





「帰ろ。シュウくんがプリン用意してくれてるよ」



「うん」





のんびり、家までの道を歩く。








うちの家は、慈善の塊だと、世間ではよく言われている。




うちの家の使用人は子どもの頃に身寄りがなかった子たちばかりだ。



シュウだって、湊音だって。



奏多…だって。




今メイドや執事として屋敷にいてくれている人たちは成人して、父に恩を返したい人ばかりだ。




みんな、いい人ばっかりで、例外なんていない。




去年までの、私の警護係だった颯太もそう。





かっこよくて、優しくて、頼り甲斐があって、面倒見がいいお兄さんみたいな子。
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