お嬢様は恋をしません。
男は立ち上がって鍵を閉め、また私のところへ戻ってきた。




「その汚い手で2人に触ってんじゃねぇよ」




「あ?まだ口答えできるわけ?



強いもんだね」





そう言って男は湊音を蹴り飛ばしたようで、




湊音はむせ返った。





「まぁ、美少女2人がボロボロにされていくのを見てるといいよ」





そう言って、男は夏織のカーディガンのボタンを外し始めた。




「やめっ…や…」





ポタポタと涙を落とす。




なりふり構ってなんかいられない。




私は後ろ手にくくられた縄を外そうとする。





「ダメダメ、そーいうことしないの」




男は私の手を押さえつけた。





「どーせ、君が外せたとしても、助けが来ないんだからせいぜい1人でしか逃げられないよ」




そう言われて、もう何もできなくなってしまった。




だめだ、もう。




どうせ、そうだよ。




外せても守る力がない。




私はずっと、頼って生きてきたんだもん。
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