お嬢様は恋をしません。
奏多は私に近づいて、足の縄に手をかけた。




「莉緒、痛くない?」



「だい、じょぶ」



「ふふっ、さ、帰ろ?」




奏多は縄をささっと解いて立ち上がり、私に手を伸ばした。




私は少し躊躇ってから、奏多の手をとった。




「さ、あとは下の子たちから逃げるだけ」



「奏多、全員倒す気?」



「まさか。警察呼んでるから、抜けだせたらそれでオッケー」




奏多は左手の親指の人差し指で丸を作る。




「よし、じゃあとっとと抜けようか。何人くらいいた?」



「ざっと300」




奏多は私たちを不安にさせないためかいつもの表情で笑う。




「莉緒、俺の手、離しちゃダメだよ?



2人のペースに合わせて進むから」




そう言って私たちは階段を抜けた。





階段を降りてからの奏多と湊音はすごい連携を私たちに見せてくれた。




私たちを挟んで、背中合わせになった2人は、異様なほどの強さを誇って、敵なしだった。



30人ほど倒しただけで倉庫から出れて、私たちは警察に保護された。
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