お嬢様は恋をしません。
「奏多、そこ座りなさい」




そう言って、西条が指をさしたのは、既にソファに座っている西条の向かいのソファ。



黙ってそこに座る。





「春休みの間、高嶋様は客人として扱われますが、春休みがあけた当日から、わたくしどもと同じ立場になります。




下手をすると、莉緒様から罵詈雑言の嵐となります」





もう、既にそんな気もするけど…。





「シュウ、楽にしていいわ」




西条が肘をついて、ポツリと呟く。




「あぁ、そうか?」




シュウさんはその言葉で、急に口調が変わった。




「俺は柴崎柊太。まあ、同僚になるわけだし、なんとでも呼べ」





シュウさんは、分厚い冊子に目を通しながら言う。




この人も、二重人格だ…。




「シュウ、話はよろしく。私、お風呂行ってくるから」




「りょーかい。いってら」




シュウさんはひらひらと手を振って西条を見送る。
< 12 / 139 >

この作品をシェア

pagetop