お嬢様は恋をしません。
少しだけ、重い空気が流れる。




莉緒は起きたにも関わらず、俺に頭を預けたまま目を閉じている。




俺は莉緒の彼氏を見て、どんな顔をすればいいんだろう。




どうしよう…かな。




いくら起きなくても、俺が気まずい。




莉緒に好きって言っちゃったし…。





そんなことを思っているうちに、揺れていた電車はゆっくり止まり、扉が開いた。




莉緒はオフの日の顔ですっと立ち上がり、電車をおりて。



思わず俺も走り下りる。




「病院、あっち」



「うん、知ってる」




俺は知っている道を莉緒に続いて歩く。




莉緒の背中は、何だか少し緊張しているようだった。





「…1回も、お見舞い行ってないの」




「え…?」




「行く資格がないって思ってたの。私が颯太に怪我させたわけだし。




…でも、逃げてるだけだって気づいた。




逃げてるだけじゃダメってことにも」
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