お嬢様は恋をしません。
俺と莉緒は病院を後にした。




「久しぶりに、顔を見たわ」





莉緒はどこか懐かしそうに少し俯いて笑った。





「そっか、イケメンさんだね」




「うん、かっこいいよ」




莉緒のこの笑顔は、多分、俺に向けられることなんて、ないんだろう。




誰にだって、好きな人にしか向けない顔はあると思う。




今の莉緒の顔は、多分、それだ。




かわいい…。





かわいいのに、悲しい。






「ねぇ、奏多」




「ん?」




「好き、って言ってくれてありがとう」





俺は少し戸惑ったけど、笑って答えた。





「どーいたしまして」
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