お嬢様は恋をしません。
奏多は痛々しく笑って、軽く腕を組んだ。




「そこは莉緒のその日の気分だからね」





そう言って颯太は私の方を向き直した。





「莉緒。待たせてごめん」





私は大きく首を振った。




「私の方こそ、ごめんなさい…。




私のせいで…こんなことに……」





「大丈夫、そんなこと思ってないよ。




莉緒のこと、守りたいって思った僕が弱かったせいだもん」




そう言って颯太は私を抱きしめた。




腕は、回せなかった。




あぁ、もう。




私、最低だ。






コンコンコン




部屋にノックが響く。





「はーい」




「検診のお時間でーす」




「はーい」




綺麗な女の看護士さんが部屋に入ってきた。





「か、帰るね…また、くる」



「うん、待ってる」





そう言って、私はそそくさと部屋を出た。




奏多も後ろをついてきた。




柊太のところへと急ぐ。
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