お嬢様は恋をしません。
私は車に乗ってすぐに、外を向いた。




「出して」



「はいはい」




柊太は涙声の私に何も聞くことはなく、そのまま車を出した。








走り出して10分。




その間、私は何を考えていたんだろう。




…何も、考えてなかったのかな。





「あー、悪い。コンビニ寄る」




「…わかった」





近くのコンビニに車が止まった。




柊太が車を降りる。





…車の中に微妙な雰囲気が流れた。





「莉緒、颯太くんのこと、大事にしてやらなきゃダメだよ?」



「…そんなの、わかってる…」




わかってるのに…、首を縦に触れない自分が、ここにいてしまう。



もう、どうすればいいのかわからない。



颯太を好きでいなきゃダメなのに。






颯太を好きでは、いられない…。





気持ちがどうしても、傾いてしまっている。




颯太と反対の方向に。
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