お嬢様は恋をしません。
私は目を瞑った。




気づいたら、寝てしまっていた。






夢を見た。




颯太が、私の目の前で笑っていた。




寂しそうな笑顔を、私に向けていた。




奏多が、泣いていた。




私の頬を包み込んで、笑いながら。








この日から私は颯太が退院する日まで1度も奏多と口をきかなかった。




聞けなかった、どうしても。




今にも口から、滑り出しそうなこの言葉が、奏多に拾われてしまう気がして。



< 131 / 139 >

この作品をシェア

pagetop