お嬢様は恋をしません。
12
颯太が家に帰ってきた。


退院して、自分の部屋に戻った颯太は、体力が戻るまでしばらく休学したままになるらしい。


…どうしよう。



帰ってきた今日、颯太に部屋に呼ばれた。



行かなきゃ…だよね?



行きたくないわけじゃないの、だけど…。



もう、わからない。自分が、誰を好きなのか。




私は夜、夕食の後に、颯太の部屋に足を進めた。



入って、なんて言えばいいの…。



私は、颯太に…。



躊躇いがちに扉をノックする。



向こうから、入っと言う声が聞こえて、ゆっくり扉を開く。



嬉しそうに笑っている颯太。



「莉緒、こっちおいで?」



「う、うん」



颯太は私を自分の座るベットの横をポンポンと叩いた。



私はストンと、そこに座る。




「ねぇ、莉緒」



「何?」



「僕さ、病院にいる間ずっと考えてたんだけどね?」



颯太は私の方を向いてにっこり笑って、私の顎に手を添えた。



「奏多のこと、好きでしょ?」



…っ。



な、にこれ…胸のざわざわした、この感じ。なに…?



「わ、たしは」



「ごめんね、莉緒。僕、待たせすぎちゃったよね?



女の子の気持ちは変わりやすいって、言うからね」
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