お嬢様は恋をしません。
ふわりと笑う、颯太。



ドキドキ、しない自分に心底驚いている。




「ち、がうわ…違う」




口ではそう言うけれど、心は、もう傾き切ってしまった、それに気づいてしまった。



「じゃあ莉緒」



そう言って、颯太は私を押し倒して、ベットに体を押し付ける。



顎をつかんでいた手は気づいたら私の両手を頭の上で押さえつけていて。



「嫌なら、嫌って言えよ」



いつもと違う、少し低い声。



そして近づいてくる颯太の顔。



声が出ない、出ないけど。



体は正直で。



怖くて。



思わず顔を背けてしまう。



「っ、あ、違う…っ」



「いいんだよ」



さっきとは打って変わって、颯太はふわりと笑うと、私の手を引いて体を起こした。



「そう言うことだよ。莉緒。



別に僕は怒ったりしない、長い間寝てた僕の責任でもあるしね?



たださ、嘘はダメ。莉緒が幸せになれなきゃ、意味ないよ」




颯太はそう言って、私を抱きしめた。




「ねぇ、莉緒。



別れようか」




それは最後まで、全部、颯太の優しさだった。
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