お嬢様は恋をしません。
そう言って颯太は病み上がりの体のくせに、私をお姫様抱っこで抱きかかえる。



「おかしいおかしい!待って、なんでそんな力戻ってるの?」


「毎日筋肉痛になりながら鍛えたからに決まってるでしょ。


早く現場復帰しなきゃ、莉緒にフラれたお荷物はちゃんと働かなきゃダメなんだよー」



そう言って部屋を出ると、奏多の部屋の前で私を下ろす。



そのまま悪い笑顔を浮かべて、奏多の部屋のドアを開けて私を押し込むと、バタンッと部屋を閉じてしまった。




…あの優しさはどこへいったの?



あとで絶対しばくんだから…。




…そんなことより。



今は私の視界に入るこのイケメンをどうにかしてほしい。



なんで上半身裸なの?



なんで髪の毛から水が滴ってるの?



なんで…え、なんで?



どうして部屋の電気が消えてるの?




「え、ノックもしないでどうしたの?」



「…いや、別に…その」




何どもってるの、私…。



いつも通り、そういつも通り。



で、それで…気持ち伝えたらいいの。



「あー…と。とりあえず、俺服着るから待って?」


「…うん」
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