お嬢様は恋をしません。
ふふっと、冗談っぽく笑う奏多。



「…期待すれば?」



「は?どうしたの、莉緒。疲れちゃったか?寝る?


え、部屋まで運べばいい?」



「…ばか」



伝わらない。



奏多にはちゃんと言わなきゃ伝わらない。



私は深呼吸して奏多を見上げた。



「…だから、期待すればいいじゃない。



…好き、それだけ」




私はそう言うと立ち上がって、部屋を出ようとする。



無理、恥ずかしすぎて無理。



どうして女の子って告白する気になれるの。



え、怖いんだけど。



本当に恥ずかしい、無理。無理なの。




私は言い逃げしようとドアノブを握った時。



すぐ後ろから手が伸びてきてドアの鍵をガチャリと閉められる。



…へ?



な、に?



気づいたら、私は奏多の方に振り返させられていて、背中にドア、顔の横には奏多の腕。


目の前には奏多の顔がドアップ。



「か、なた?」



「言い逃げはやめようか?



もう一回、言って?」



いつもより低い声で、呟く。



至近距離すぎて、私の体が彼方の体に触れている。




「…っ、何よ」
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