お嬢様は恋をしません。
「奏多くんは身寄りがないと、聞いたのですが…」





西条は控えめにそう言った。



遠い親戚しかいない。



父さんも母さんも駆け落ちして、身近な親戚とは縁を切ってしまったから。




今回の葬式も遠い親戚がしてくれたものだし、ここまでしてもらって、俺を預かってほしいなんて、言えたもんじゃない。



俺は多分、このまま児童施設に送り込まれるんだと思う。




「よかったら、私のお家で一緒に住みませんか?



お父様にはご恩があるので」








この一言で、俺は西条莉緒の家に居候することになった。




否。



西条莉緒の家で使用人として働くことになった。
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