お嬢様は恋をしません。
2
次の日。



家の前に止められたのは黒いリムジンだった。




「おはようございます。お迎えにあがりました」




そうやって爽やかな笑みを浮かべるのは西条莉緒。



うちの学校のマドンナで可愛いし、性格もいい。



らしい。




実は中学から同じ学校だけど、あんまり知らない。




俺は最小限の荷物と、最後に家族で撮った写真をカバンに詰め込んで、家を出た。



家族と過ごしたこの家ともお別れ。



まだ、たくさん思い出を作れるはずだったのに。



そんな、いかにも好青年的な思いを浮かべながら、女の子に連れられてリムジンに乗る。



お金持ち、なんだな。



運転手さんが、ドアを開けてくれて、頭を打たないようにガードまでしてくれて。



本当に、至れり尽くせり。




「出しなさい」



そして、車に乗り込んで、西条が少し低い声で合図を出した。



車が走り出す。
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