お嬢様は恋をしません。
こういう時は…こういう時でなくても。



湊音くらい身長が高いと良かったのになぁと思う。



俺チビだからなぁ。



俺が莉緒の隣にもたれると、電車が走り出した。




「今日は混むね〜」



「始業式だからね。部活の朝練がないんだよ」




超至近距離で会話するお嬢様と使用人。



電車が揺れるたびに、2人の体がくっついて、見ていてこっちが恥ずかしくなる。




「湊音、まつげついてる」



「ん?どこ?」




莉緒は湊音の顔に手を伸ばす。




「ん、取れたよ」



「ありがと」




…何だこの甘い雰囲気は。



居づらいわ。



電車に乗ってるのが10分だけで良かった。



精神がすり減る。




しばらくして学校の最寄駅に着いた。



電車を降りると莉緒はニコニコと俺の横に駆け寄ってきた。




「ねぇ奏多。今日は一緒に帰ろっか」



「あぁ、うん。そうだね」




にっこりと笑って話しかけられたのでつられて俺も笑う。
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