お嬢様は恋をしません。
同点。




そんな中動いたのは水野さんだった。




莉緒がボールを持った時、水野さんはゴール下まで静かに素早く動く。




莉緒がそれを見逃すはずもなく。




「莉緒、パスっ」





水野さんの透き通った声と同時に莉緒がボールを投げた。




水野さんはそれを受け取って、宙に浮いた状態でゴールにボールを投げ込んだ。




ゲーム終了のブザーが鳴る。




ボールはゴールに綺麗に入っていった。




ゲームは莉緒たちの勝ち。




俺の横で時雨は分かりづらく笑う。




「水野さん、かっこよかったね」



「…あぁ」




莉緒と水野さんは俺たちを見つけて、タオルを持ったままこちらに走ってくる。




「お疲れ様ー」




「ありがとー」




莉緒は嬉しそうに微笑む。



首に流れる汗がガチだったことを証明している。



…一方横では、2人が青春を繰り広げていた。
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