お嬢様は恋をしません。
「…おつかれ」



「ありがとう」



「…頑張ってたんじゃね」



「〜っ、あ、ありがとう」




時雨は恥ずかしそうに目をそらし、水野さんは水野さんでタオルで顔を隠している。




耳まで赤い。





ふと、2年前の記憶が蘇った。



あいつらも、あんな風に青春してたっけ…。



顔を赤くしてセミロングの髪を揺らすあの子の顔が鮮明に浮かぶ。



…何、思い出しちゃってるんだろう。




もう、忘れてもいいことなのに…。




「夏織可愛いー」




そう言って水野さんに抱きつく莉緒。



そして振り回す。



「どうしてそんなに可愛いの?




なんで、山森くんなの?もっといい人いたでしょー…」




そう言いながら、水野さんに鼻を押し付ける。




「…こいつ嫌い」




拗ねた時雨は莉緒のことを指差す。




「だってだって、山森くん素っ気ないじゃん。



夏織なら選び放題なのになんで…」
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