お嬢様は恋をしません。
「シュウ、黙りなさい」




凛としたまま、西条は諌める。



ほんの少し、顔が赤いように見えるが。




それから20分ぐらい、車に揺られた。



連れられた家は、豪邸で。




俺とは別世界の人間なんだな、と感じる。




「おかえりなさいませ、莉緒様、高嶋様」




何十人と玄関に並ぶ執事やメイドさんたち。




全員が同じ角度で頭を下げていて、ちょっと気持ち悪い。




「ただいま。この子の部屋は用意できた?」




着ていたカーディガンを、シュウと呼ばれていた人に渡しながら、メイドの1人に尋ねる。




「はい、もちろんでございます。こちらへどうぞ」




メイドさんは満面の笑みで、家の中に手を向け、即座に歩き出す。




「奏多、ついて来なさい」




「あ、あぁ」





西条はメイドに続いてスタスタと歩く。



その半歩後ろをシュウさんが歩く。
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