お嬢様は恋をしません。
扉が思いっきり開いて、そこから顔を出したのは奏多。



息を切らしながら、後ろを振り返る。




「こ、こんなところでっ、どうしたの…っ」




息を切らしすぎて、言葉がまともに紡げていない。




「いや…ちょっと気晴らししてたの」



「そ、そっか」




すると、遠くからパタパタと足音が聞こえた。




「やっば…」



「えっ、ちょ…きゃっ」





奏多は焦ったように私を引っ張って入り口から見えないところに移す。



足に怪我している私はバランスを崩して、奏多に倒れこむ。



奏多は私を壁に抑え込んで、自分の手で私の口を塞いだ。



「しーっ」



声を抑えてそう言うと、奏多は様子を伺うように集中し始めた。





やばい、なんか、ドキドキしちゃってる。





胸の音が、うるさい…。




私の体に触れている奏多の体から熱が伝わってくる。





「どこだ、あいつ、どこいった」
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