お嬢様は恋をしません。
* * *


「莉緒」



「はーい」




その日の放課後には奏多はいつも通りに戻っていて。



私の名前を呼ぶ明るい声は私には痛々しく感じてしまう。





「帰ろー」



「うん」




夏織と湊音に手を振って、奏多のところへ走る。




私たちは学校を出て駅までの道をぼーっと歩いた。



足に怪我をした私に気を使ってか、いつもよりのんびり歩く奏多。



ふと隣を見上げると、目をこすりながら、歩幅を狭めてあるいていた。




「奏多、眠い?」




「んー…、 昨日あんまり寝てないんだよねぇ…」




そう言って、奏多は大きなあくびをする。




たしかに、昨日はシュウの部屋からガサゴソと音がしていた様な気がしないでもない。




それがうるさかったのかしら?




そんなことを思って歩いていると、突然奏多の手が私の手に触れる。
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