お嬢様は恋をしません。
長い廊下の末にたどり着いたのは大きな扉。




「こちらのお部屋です」




そう言って開けられた部屋の中は驚くほど広く、かつ何もなかった。




「すいません、まだ何もなくて。ベットや机も取り寄せするところまではしたのですが…」



「突然だから仕方がないわ。今日は違う部屋で休んでもらいましょう」



「申し訳ございません」




西条は俺を振り返った。




「奏多。ここに荷物だけ置いて、ついて来なさい」



そう言って西条は、頭を下げ続けているメイドを置いてまたスタスタと歩き出した。



慌ててカバンを部屋に置いて追いかける。




少し歩いて西条はピタリと動きを止めた。



「シュウ、予備のベットってあったかしら」



「…つい先日、ほかの使用人がベットを壊してしまい…」



「…そう」




すると西条は、俺を振り返った。




「奏多、今日あなたの寝る場所がないわ」



「へ?」



「どうしましょう」
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