お嬢様は恋をしません。
「ごめん…ごめんなさい…っ」



「どうしたの?莉緒?」





おかしくなったように謝る私を、困ったように見つめる奏多。



フラッシュバックした記憶が頭から離れてくれない。




私のことをすくい取って、地獄へ突き落とす。





「大丈夫だよ、莉緒。もう、大丈夫だから」




奏多は優しくそう言うと、私のことを抱きしめた。









そこから先の、私の記憶はない。




気づいたら、家にいて、自分の部屋のベッドで朝を迎えた。




無意識にずっと奏多の手をつかんでいたようで、奏多はベットの下に座り込んで、こくこくと頭を揺らしながら寝ていた。




私も奏多も制服のままで。




学校がお休みの日で本当に良かった。




私は奏多の頭に手を伸ばして、ふわりとした髪に指を絡ませる。



頭を下げていた奏多は目を開いて私を見つめて、ふわりと笑った。





「おはよう」



「…おはよ」
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