お嬢様は恋をしません。
女の子の近くに行ってそうたずねると顔を赤くして決まってこう言う。




「奏多くん…写真撮ろう?」




「ん、スマホ貸してみ?」




「う、うんっ」




さっきからこの作業を何回も繰り返している。



そろそろ笑顔が引きつり始めた。




「…モテ男は大変だな」




「モテてる感じはしてない…新手のいじめ感覚」




「…お前がタラシなのが悪いわな」




「タラシってなんだよ…」




俺は頬のマッサージをしながら、時雨の近くに戻る。




時雨は嬉しそうにテントの下に座っている。




何がそんなに嬉しいんだか…。




俺はハチマキを結びながら、時雨の隣に座った。




「で、最近どうなの。お二人さんは」




「…どうもこうもねぇよ。…夏織の部活のおかげで最近一緒に帰ってねぇ」




「部活なんか入ってたっけ?」




「…吹奏楽」




「へぇ…」
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