お嬢様は恋をしません。
莉緒は黙って、俺の頭に手を置いた。




「…ほんとに、好きだったんだよ」




「うん」




「…でもあいつは、俺より俺の親友を選んだ」




「うん」




「…俺のことなんて、あっさり捨てて。



…なのに今更現れて」





「うん」





「俺…どうすればいいか、わかんないよ」





いままで、誰にも行ったことのなかった本音が、次から次へとこぼれ落ちる。




地面に、シミが出来ていく。






「奏多が本当にしたいことをすればいいよ。



今、思ってること、言ってあげればいいよ」








莉緒の優しい声は胸の奥まで広がって、




ただ、音もせずに染み込んでいった。










夜、家に帰って元カノに───志帆にメッセージを返した。




『次の土曜日、空いてる』
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