お嬢様は恋をしません。
前みたいに、何か起こればいいのに。




心のどこかでそう思って、私は屋上に来た。




フェンスに寄りかかる。




風が、今日は弱い。




いつもならもっと強く吹いてて。




こんな感情も、吹き飛ばしてくれそうなのに。




役立たず…。





「…バカ」




誰が?私が?




それとも、いつまでたっても帰ってこない颯太が?




それとも。




私を惑わせる、奏多が?





…何、考えてるんだろう。




好きなんかじゃないの。




私が好きなのは颯太、だけで。





私はフェンスにもたれたまま座り込むと、そのまま顔を隠した。





もう無理だよ、わかんない。




私が誰が好きで、誰を求めてて。




なんでこんなにも涙が止まらないのかも、全然、わかんない。




昼休みに来たはずだったのに、気づいたら日は傾いていた。




寝てしまったみたいだった。
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