竜の姫君
 
「ぴっ」
 ぴっ?
 胸元で声がした。エルだ。
 この期に及んで目が覚めたわけか。
「ぴぃやあああああああああ」
 うわっ!
 号泣というか、爆泣だ。
 耳が痛い。
 泣き叫ぶエル。
 これにはさすがの魔法使いたちの動きも止まっている。
 と言うか真っ青になっている。
 何もそんな驚かなくても。
「ぎゃああああっ!」
 不意に悲鳴の三重奏を残して魔法使いたちは土煙とともに逃げ去っていく。
 何なんだ、あれ。
 いくら泣く子に勝てないとか言ったって、あれはないだろうに。
 まったく。
 エルはすでに泣き止んでるし。
 あたしの肩越しに身を乗り出すように手を伸ばす。
 うん? なんかあるのかな。
 つられるように振り返って、あたしは腰を抜かした。





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