竜の姫君
 竜だ。
 竜。
 青い、真っ青な竜。
 おまけにでかい。
 見上げると、首が痛くなるほどでかい。
 森の木よりもでかい。
 とげとげがいっぱい生えた背中には、こうもりのような翼。
 でかい足にはもちろん鋭い爪。
 こちらを見下ろす瞳は金色。
 でかい口からは、尖った牙と赤い舌がちらりと見える。
 あたしなんて一飲みにされてしまいそう。
 逃げないと。
 胸元でエルが何か言っているようだけど、耳には入らない。
 何とかして逃げないと。
 そればかりが頭をめぐる。
 あの魔法使いたち、三人もいてあっさり逃げていきやがった。
 ちょっとは助けてくれてもよかったのに。
 エルを抱いたまま腰を抜かしていたあたしは、よろよろと立ち上がった。
 と、じっとあたしを見ていた竜が金色に輝きだした。
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