竜の姫君
 金色の輝き。
 前にどこかで見たような。
 そうあれははじめてエルに出会ったときに見た光。
 でも、それはずっとまばゆく強烈で。
 あたしは思わず目をつぶって、そして開いた。
 はたして、目の前には人の姿。
 それもすこぶるつきの美青年。
 風に吹かれればさらさらと音を立てそうな髪は青銀。
 どこかエルに似た面差しは怜悧で、非の打ち所はない。
 強い輝きを宿す黄金の瞳だけが竜であったときの名残を残すだけで、光沢のある青い衣に灰色のマントを羽織る姿は、どう見ても人間にしかみえない。
 それにしても。
 エルにしてもこいつにしてもムダに綺麗過ぎないか。
 こっちが人間やめたくなるわ。
「あっ!」
 脱力するあたしの腕をすり抜けて、エルが青年に走りよる。
「待っ……」
 呼び止めかけて考え直す。
 これはあれだ。
 お迎えだ。
 うん、そうに違いない。



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