竜の姫君
「僕は約束通りに大きくなったし、君の伴侶としての力もつけた。だから、これからはずっと君の側にいる」

 でかい体をした顔だけは美少年(でも中身竜)は、あたしの前に跪いた。
 真剣そのものな表情で見上げる彼に、あたしは固まった。
 そうするとエルそっくりなのだ。
 特にこっちを見上げる青い瞳が。

「ほんとうにエルなの?」
「ほんとうだよ」

 あたしは自分の唇に手をあてて考える。
 時空を翔んでとか言ってなかったっけ。
 つまりこいつら時間の中を自由に移動できるということ?
 だったら、年齢の点は問題はないということか。
 あたしにとっては大問題だけど。
 エルの父親がそんなに待つ必要はないって言い残したのは、そういうこと?
 でも、だとしても残された問題がある。

「でも、きみは男の子だよね?」
「そうだよ、たしかに卵は産めない」

 あたしも卵は産めないけど。
 って、そういう意味じゃないんだろうけど。
 そういえば、エルが男の子か女の子かきちんと確認したわけでないなあ。
 あんまりかわいいかったから女の子だとばかり思っていただけな気がする。
 じっと考えこんでいるあたしにじれたのか、エルが手を伸ばす。

「マルガ、マルガリータ。君を生涯、守り続けるよ」
 そっと取ったあたしの手に口付けを落とすと囁いた。
「僕の姫君」

「ええええええええっ!」

 我に返ったあたしは絶叫していた。
 ないから。
 それ、ないからっ!

          (FIN)



< 22 / 25 >

この作品をシェア

pagetop