竜の姫君
第2章
「で、いつ産んだんだい?」
「産むかい!」
「じゃ、産ませた?」
「んなわけあるかい!」
「あんたならあるかと思って」
「なんでだよ」
 行きつけの喫茶店。
 カウンターで女主人と不毛な会話を交わしているあたしの後ろのテーブルでは、ソレがウェイトレスたちにちやほやされていた。
 いや、わかる、わかる。
 そりゃ、かわいいし。
 ふわふわの金髪に、青い瞳。
 ちっちゃな手でマグカップを大事そうに抱えて、ミルクを飲んでいる姿はどうみても三、四歳くらいの幼女。
 っていうか、美幼女。
 だけどさ、そいつの正体はあたしは知ってんだ。
 変な生き物なんだぞ。
 正体不明なんだぞ。
 え? これって、知ってることになるのか?
「似てるんだけどねえ」
「誰と誰がだい?」
「あんたとあの子」
「あのねえ」
 脱力。
 確かに、あたしは金髪に青い瞳だ。
 でも、あたしの髪はあんなきらきらしてないし、つやもない。
 ふわふわじゃない。ごわごわだ。
 目も青いって言っても、灰色かかっている。
 第一、あんな可愛い目鼻立ちはしていない。
 まあ、ブスまで言わないが、美人でもない。
 ごく一般的な顔立ちだ。
 まあ、そんなことはどうでもいい。
 どうしたら、あれとあたしが似てるんだ。
 あれは人間ですらないんだよ。
 似る似ない以前の問題だ。
「ママァ?」
 マントを引っ張られた。


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