竜の姫君
「うわっ、たいへん、たいへん」
「ミア、ほうき、ほうき」
「チリトリ、チリトリ」
 見事と言っていいほどの連係プレイで、落ちて毀れた花瓶と花の残骸を片付けはじめるウェイトレスさんたち。
「ほれ、モップ」
 カウンターの裏から女主人がモップを取り出して、掃除に加わる。
 あたしは呆然と立ちすくんでいる。
「マァ?」
 足元では例の金髪のアレが手を伸ばしてくる。
 これは、あれか、抱き上げろということか。
 あたしは手を伸ばして抱き上げる。
 軽い。
 見た目よりずっと軽い。
 抱き上げるのは初めてではないから軽いのは知ってはいるが、やっぱり見た目にごまかされてしまう。
 まあ、本体が子猫くらいだからそんなものなんだろうけど。
 エル(仮称)はためらいもなくあたしの首に腕をまわしてくる。
 まじで母親とでも思ってんだろうなあ。
 本当の親を探さなきゃな。


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