竜の姫君
 参った。
 主人の制止を振り切って路地裏に逃げ込んでみたものの、これはちょっと厄介なことになったかも。
 いや、ちょっとどころじゃないか。
 あの主人の言う通りだとすると、魔法庁に追われることになりかねない。
 だけど、なんか素直に渡してしまったら、いくらなんだかわからないモノとはいえ、この子はとんでもない目に合いかねない。
 解剖とか?
 うわっ、背筋がゾクゾク。
 それはかわいそう過ぎるだろう。
「情がうつちゃったか」
 のんきにあたしの腕の中で眠りこけている、かあいい寝顔に目を落とす。
 やっぱ、かわいい、かわいすぎるぞ。
 これは、あれか?
 母性愛に目覚めてしまったってことか。
 ありえなーい。
 あたしはまだまだ花も恥らう16歳。
 親に甘えたい年頃さ。
 って、自分で言ってって恥ずかしくなった。
 とにかく、後はアレだな。
「犯人は現場に戻る」
 なんか、違う気がするけど。
 次、行ってみようか。


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