私と彼の525日
「あ、もうこんな時間!」

美琴としばらく話し、ふと時計を見ると17時になるところだった。
ここの病院の面会時間は17時までなので美琴は慌てて荷物をまとめる。

「じゃあ、今日はもう帰るけどまた明日も来るね!退院決まったら絶対連絡ちょうだい!」

「わかった。今日は来てくれてありがとうね。」

「全然大丈夫!じゃあまた明日ね!」

そう言って美琴は手を振って病室を出て行った。
パタパタとスリットの弟が遠ざかり、やがて聞こえなくなった。
美琴が帰ると静まり返る病室。
外もすっかり暗くなり一人でいると心細さと薄気味悪さを少しだけ感じた。

あまりにも暇なので枕元に置いてあったスマホに手を伸ばす。やはり全身打撲ということもあってスマホを掴むのにも精一杯で痛みも伴った。やっとの思いでスマホを手にとった瞬間ちょうど美琴からLIMEが来た。

『幸来今日はごめんね』

美琴ったらまた謝ってるし〜。

「だから美琴が気にする必要ないよ。
今日は来てくれてありがとうね。」

『ううん!全然大丈夫だよ!
あと入院手続き、うちのママにして貰ったから
幸来は心配しなくて大丈夫だよ。』

美琴に気使わせちゃったな。
おばさんにもあとでお礼言わないと…。

「ありがとう美琴。気使わせちゃってごめんね。
本当に助かる。」

『全然!それより今日はゆっくり休んで!』

「ありがとう。おやすみ美琴。」

『うん!おやすみ!!』

美琴とのLIMEが終わりゆっくりと目をつぶる。

お母さん今何やってるんだろうな。

美琴から送られてきたLIMEでふと自分の母親のことを思い出す。

私は母からネグレクトを受けていた。ネグレクトとは簡単に言えば育児放棄のことだ。小さい頃から母は私の面倒をほとんど見てはくれずその代わりに幼馴染の美琴の母親に我が子のように育てて貰った。
美琴と美琴のお母さんには感謝してもしきれないくらいの恩がある。

美琴の母親が私の面倒を見てくれていることをいいことに、高一の春、とうとう私の母は毎日男の家に行ったっきり家には帰って来なかった。
そんな私に気を使って今回も美琴のお母さんは私の母には連絡せずに


「一人って暇だなあ…。」

全身打撲のため体が痛くてあまり動かす気になれない私は眠りについた。
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