白馬の悪魔さま 【完】番外編追加

その言葉に、隙間なく埋まったスケジュール帳を思い出して苦笑いが零れた。
毎年この時期は、お世話になっている取引先の方々から食事の誘いが絶えない。
嬉しい事だけど正直大変だ。
中にはお見合いさながらに、自慢の息子を連れてくる社長さんもいる。
彼氏がいると言えたら楽だけど、お付き合いが続かない私には、そんな断り文句も使えない。
だからホワイトデーも誕生日も、楽しみよりも憂鬱の方が大きい。
我ながら悲しいことだ。


冬月先輩と別れてデスクに戻ると、携帯が光っているのに気づく。
触れた画面に表示された名前に、指先が震えた。
【椿社長】
私は携帯を掴むと、誰もいない廊下に出た。

「もしもし」

「……」

「椿社長?」

返事のない電話に不思議に呼び掛けると、掠れた声が「芙美」と呼んだ。
それだけで、意味もなく泣きたくなった。

「椿社長?どうかされましたか?」
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