白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
こんな平日の昼間にかけてくるなんて珍しい。
だけど男はまた黙り込んで返事がない。
「あの、私、今は仕事中で……えっと、椿社長もお仕事中ですよね?それともお休みとか、」
「ゴホゴホッ」
喋りかけた電話の向こうで、突然咳き込む声がして、私は漸く状況を理解する。
「もしかして、風邪ですか?」
「……うん」
うんって。
「熱はあります?」
「ある」
「えっと、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないから電話した」
「それは、」
「仕事終わったら来て」
いつもの余裕のある態度とは違う、弱々しい男の言葉に、今すぐにでも頷きたかったけれど、私はその気持ちを抑えて、聞こえないように深呼吸をする。
「私が行ってもいいんですか?」
「なに?」
「だって、来るなってこの前」
「ああ、姫子なら、今朝帰ったから」
なんで今、そんなこと言うのかな。