白馬の悪魔さま 【完】番外編追加

ベッドに横になった男の身体に布団を掛ける。

「薬、飲みますか?」

ベッドサイドに置かれたそれを見せると、椿王子は黙って頷いた。
一緒に置かれていたペットボトルの蓋を開けて渡す。
それを手にした男が、錠剤と水を流し込む。
ゆっくりと動く喉仏に、私の心臓がまた動きを速める。

「もう少し寝ますか?」

「……ああ」

「大丈夫です。帰りません」

あまりにも辛そうな目で私を見つめる椿社長に、思わずそんなことを言ってしまう。

「ちゃんと、ここに居ます」

でも本心だ。今は離れたくない。
熱で汗ばむ額に張り付く前髪に、私はそっと触れた。

「芙美、」

その手が私に伸ばされる。
求めるように、誘うように。
だから顔を近づけた。
触れるだけの一瞬のキスに、全身が痺れた。


部屋の灯りを点けたのは、夜の10時を過ぎた頃だった。
二人で寝ても充分に広いベッドに近づくと、さっきよりも顔色が良くなっているのがわかる。
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