白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「それにお前も、俺に抱かれたくてここに来たんだろ?」
「私は、椿社長が心配で」
「芙美、」
息も出来ないほど苦しいのに、涙の流し方を思い出せない私は、どこまでも可愛くない女だ。
ああ、どうしよう。
こんな時に思い出す。
今朝聞いたばかりの噂話を。
こういうのを、最悪のタイミングと言うのだろうか。
「俺がお前に優しくするのはさ、」
甘い顔して近づいて、自分に夢中にさせて、本命の彼女は別にいるのに、性欲は別で満たそうとする。
“狙われているのよ、あんた”
「……最低」
「は?」
「最低!!」
その身体を突き飛ばすように、力いっぱい両手で押し退けた。
「芙美?」
「もうやめてください!」
叫んだのか泣いたのかもわからないような声だった。
「私はあなたの玩具になるつもりもないし、そういうことする人間と関わるのも嫌です!それに、」
終わらせる為に、息を吸った。