白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
考えるように話す野瀬京平の声は、腹が立つほど穏やかだ。
「だったらなんで里香にしたのよ」
「まあ、無理だったんですよね」
「無理?」
「はい。憧れでいいと思っていたけど、里香さんとの距離が近づいた瞬間に欲が出たんです。自分でも引くほどに」
「……欲」
その言葉に、あの日の自分の姿が浮かぶ。
椿社長に会う為に、チョコレートを5つも用意した私。
きっとあの時には既に、何か起きることを期待していたのだろう。求めていたのだろう。
「恋愛には不向きだとずっと思っていましたけど、ただの勘違いでした」
「勘違い?」
「里香さんとならどこまでも堕ちていけるくらいに、恋愛をしたいと思えるんです」
「ねえ、それのどこが私と似ているの?」
「つまり、好きになると自分でも制御できないってことです。我ながら迷惑な人間だと思いますよ」
箸を置き、グラスに入った水を飲んだ野瀬京平が、もう終わりだと言うように、手元の時計に視線を向けた。
「なんか、いまいち納得出来ない」
「そうですか?まあ、違うとしたら興奮するポイントじゃないですか?」